1925年 — アッサムからの一粒の種
物語は1925年に遡ります。日本統治下の台湾で、植民地政府がインド・アッサム地方から大葉種茶の種子を持ち込み、南投県魚池郷に試験植栽しました。標高600-800m、年平均気温約20°C、豊富な雨量と朝霧という魚池の風土がアッサムとよく似ており、茶樹はこの地で見事に育ちました。
1936年に魚池紅茶試験支所が設立され、生産された紅茶は英国や日本に輸出されるほどの高品質を誇りました。
栄光と衰退
1950-1970年代は日月潭紅茶の黄金期。魚池郷のほぼ全世帯が茶を栽培・加工し、台湾の重要な輸出農産物でした。私の祖父もこの時代に白玉茶園を始めました。
しかし1980年代、国際紅茶価格の暴落、人件費の上昇、国内市場のウーロン茶・緑茶シフトにより、産業は急速に衰退。茶園面積は数千ヘクタールから数百ヘクタールへ激減しました。
台茶18号「紅玉」— 運命を変えた一杯
1999年、魚池茶業改良場が数十年の研究を経て発表した台茶18号「紅玉」。ミャンマー大葉種と台湾野生山茶の交配品種で、世界のどの紅茶にもない天然のミントとシナモンの香りが特徴です。
紅玉は国際品評会で数々の賞を獲得し、「台湾紅茶の最高峰」と称され、日月潭紅茶産業の復興に火を付けました。
台茶21号「紅韻」
2008年発表の台茶21号「紅韻」は、インドKyang種と祁門紅茶の交配種。柚子花と蜂蜜の香りが特徴で、紅玉とは異なるスタイルの世界レベルの紅茶です。
現代の復興
紅玉の成功を機に、荒廃した茶園が再生し、若い世代が帰郷。和菓森林やHohochaなどの観光茶荘も誕生しました。現在は有機栽培や自然農法に取り組む農家も増えています。上質な紅玉紅茶は1台斤(600g)NT$2,000-5,000(約10,000-25,000円)。
白玉茶園 — 三代の物語
祖父が1960年代に茶園を始め、父は最も厳しい時代も茶園を守り続けました。紅玉の登場とともに、いち早く栽培を始めた農家のひとつが私たちです。
現在も手摘み・日光萎凋の伝統を守り、丁寧に少量生産しています。この一杯の紅茶には、百年の歴史と三代の物語が詰まっています。ぜひ当宿で、その物語を味わってください。